卒業研究における教育方針

公開日:2019-05-25
最終更新日:2020-07-15

指導教員の奥は2016年に龍谷大学に着任しました.これまで指導してきた学生をみてきたところ,当学科の学生は真面目な学生が多いという印象です.与えられた課題には真面目にコツコツと取り組むことができる力があるとみています.この真面目さというのは,これから長期的に生きていくための大きな強みになります.

一方で,謙虚さが現れているのかもしれませんが,どこか自分を過小評価しているようにみえるところがあります.これは非常にもったいないことだと思います.もちろん自信過剰になるのはいけませんが,もっと自信をもって,外の世界に一歩踏み出せば,新しいことやより難しいことにチャレンジでき,それがまた自信につながります.自信さえつけば,後は自ずといろいろとついてくるものです.奥研の役割は,皆さんにしっかりとした自信をつけさせて卒業してもらうことであると考えています.

奥研では,研究活動を通して「自分もやればできるんだ」ということを実感させ,自信をもって社会に出て行ってもらうことを教育目標にしています.とはいえ,単に精神論的に「やればできるんだ」というような暗示をかけるというわけではありません.「根拠のない自信」とよくいわれますが,奥研では,「根拠のある自信」をもって活躍できるような人を育てたいと思います.その根拠というのは,「これは誰にも負けない」という自身のセールスポイントとなるような武器と,その武器を裏付ける成功体験です.

まず,成功体験について述べます.奥研に配属された学生には,原則全員,学部を卒業するまでに学会や他大学との合同研究会等の学外での研究発表を行ってもらいます.「学会発表なんて自分には無理」と不安に思う学生も多いかもしれません.だからこそ,「不安だから勉強する」という意識をもって,日々勉強して力をつけていく必要があります.勉強していくことで少しでもその不安を解消していきます.

初めて研究に取り組む学生にとっては,研究のいろはもよく分からないことかと思います.それは当然ですし,問題ありません.そこで,卒業研究では,まずは分からないながらも奥の指示にしたがって,研究を進めていってもらえればOKです.まず,3年次後期の最初の研究会で研究テーマを提示します.その中から,興味をもって取り組めるテーマを一つ選択してもらいます.後は,個別ミーティングおよび定期的な研究会における進捗報告を繰り返しながら,研究を進めていきます.教員から与えられる課題を一つ一つこなしていきます.ゲームでは開始時にチュートリアルが用意されているものが多いと思います.このチュートリアルでは,指示にしたがって進めていく中で,ゲームの操作方法やルール等を覚えていけるようになっています.これと同じように,奥研での卒業研究指導は研究チュートリアルのようなものです.与えられた課題に沿って研究を進めていきながら,研究というものはどのようなものかを学んでいきます.課題をコツコツとこなしていくことで,目安としては1年後の8月頃には卒業論文として完成します.その後は,学会発表に向けて準備し,発表練習を積み重ねることで,学会発表という成果に結びつけられます.ここで,課題をコツコツと進めていくという過程で,真面目さというものが大事になります.

さて,もう一つのセールスポイントとなる武器についてです.武器とは技能(スキル)を指します.奥は,長期的に生き抜くために必要な力として,知的体力というものを重要視しています.知的体力とは,基礎学力をベースとした粘り強く考え続ける力や学び続ける力ということになります.基礎学力とは,読み・書き・計算などのさまざまな学習の基礎となる知識や能力を指します(『デジタル大辞泉』,小学館).肉体的な体力を鍛えるには筋トレや走り込みなどを継続して行うということになりますが,知的体力を鍛えるためには,本を読む,論文を読む,文章を書く,コーディングするということを習慣化する必要があります.これらは研究指導の中で奥から与える課題を通して実行していくことになります.これらの訓練を繰り返し積み重ねていくことで,文章力プログラミングスキル論理的思考力といった技能が身に付いてきます.

これら獲得した技能を使うことで,より専門的な技術が修得できるようになります.奥研においては,専門技術はすなわち推薦システムということになります.推薦システムの実装技術自体は,時と共にどんどん変わっていきます.ですので,奥研で学んだ実装技術そのものが,卒業後もそのまま変わらずに使えるというわけではありません.しかし,推薦システムの根底には基礎となる情報技術数学があります.推薦システムの研究を通して,これら情報技術や数学といった基礎学力が修得できます.この基礎学力をベースに知的体力をより強固なものにしていくことで,より高度な技能を修得できるようになっていきます.こうして獲得された知的体力は,卒業後も社会で活躍するための原動力となります.しかも,この力は短期的に失われていくような表面的なものではなく,自身の内に深く根付く力となります.これは,10年,20年といったスパンで長期的に生き抜いていくための大事な力になります.

以上のように,研究活動を通して,知的体力を磨いていくことで,それがセールスポイントとなり,自ずと自信が芽生えてくるようになります.これに加えて,学会発表等の成果に結びつけられれば,それが成功体験となり,「自分もやればできるんだ」と自信を確信へと変えることができます.確固たる知的体力に加えて,自信や意欲といった精神面の強さが掛け合わされば,これから遭遇する困難にも自力で立ち向かっていけるようになると思います.

すなわち,皆さんのもつ真面目さを,真面目さ → 知的体力 → 成功体験 → 自信へと変換して卒業してもらうことが奥研の役割であると考えています.